
犬の前十字靭帯断裂に対する外科治療の術式には様々な報告があります。関節外法やTTA、CBLOやCCWOなど、それぞれの創意工夫のもと理想を求めて開発された素晴らしい術式なのですが、Dr .Slocumが発案したTPLOという術式は、術後の高い安定性、早い復帰、シンプルな治療原理などのという点で群を抜く存在といえます。
TPLOが発案されたのは1990年代ですが、その基本コンセプトは継承されながらも、インプラントの開発技術の発展とともに、今なお進化を続けるレジュンドみたいな術式です。
まさに最強の術式TPLOと言えるのですが、そんな TPLOにも合併症があります。合併症対策によって防げるものから、個体間の個性の差によって防ぎきれないものまで様々です。
見たら怖くなってしまうかもしれませんが、TPLOについて正しく知っていただきたいので、洗いざらい列挙してみます。
TPLOの合併症に関するデータ

列挙してしまうと多く感じてしまいますね。
ただ、発生率を見るととても少ないとも言うこともできます。また、半数近くの合併症に対しては、その予防法や対策案も考案されており、1000例のTPLO症例の術後追跡において、合併症発生率14.8%(内、重度合併症6.6%)というデータが報告されています。
シンプルな原理の術式の裏に、先人の先生方が失敗と成功を繰り返しながら培ってきた数多くの合併症対策が惜しげもなく現在の我々に繋がれていることで、最強のTPLOが形作られていると思うと恐れ多い気持ちになります。歴代の先生方が築いたデータの数々を見ていると、私もまだまだ精進せねばと強く思わされます。
(※最強=全ての症例に『最適』ではありません。実際の臨床現場では、症例毎に年齢や運動習慣、性格などを考慮した選択がとても重要です。)








