愛犬が急に散歩に行かなくなる原因には、さまざまなものが考えられます。原因の範囲も広く、運動器疾患から内科疾患、脳神経系の疾患から心理的なものまで多岐にわたるため、症状のみで原因に迫るのは難しいかもしれません。
そのため、「散歩を嫌がる」という症状に対しては、どこか調子が悪いのかな?と思うところから始めるとよいと思われます。
この記事では、日常の診療で比較的よく遭遇する原因についてまとめています。
目次
よくみられる原因(大別)
- 足腰の問題
- お腹の痛みや違和感
- 目の病気
- 脳神経系の問題
- 心理的な問題
原因詳細
足腰の問題
整形外科疾患や加齢性の問題、皮膚疾患や外傷などが考えられます。比較的多く遭遇する疾患には以下のような原因があり、それぞれ歩行に伴う痛みが原因となります。
- 膝蓋骨脱臼(パテラ)
- 前十字靭帯断裂や部分断裂
- 大腿骨頭壊死症
- 椎間板ヘルニア
- 退行性関節炎
- 変形性関節炎
- 指間皮膚炎
- 爪鞘炎
- 足裏皮膚の異物刺入
診断方法
触診やレントゲン検査、必要な場合はCT検査やMRI検査を組み合わせて診断します。通常は、お散歩に行きたがらないという症状のほかに、さまざまな程度の跛行を認めることが特徴です。
お腹の痛み/違和感
内臓の炎症疾患による鈍痛や、腫瘍による圧迫の違和感、内臓疾患による血液の酸塩基平衡の異常などからくるだるさなどが原因となります。
- 胃腸炎/肝炎
- 比較的大きくなる腫瘍(肝臓や脾臓の腫瘍)
- 血液の酸塩基平衡の異常
- 腎障害
診断方法
疾患によってさまざまですが、まずは血液検査を行うことが一般的です。血液検査の結果に基づき、レントゲンやエコー検査、CT検査等を組み合わせて診断します。散歩を嫌がるほかに、元気・食欲の低下や嘔吐・下痢などの臨床症状を認めることが多いのが特徴です。
眼の病気
眼の痛みや視覚異常によって、動くことを嫌がる場合があります。「眼の痛み」の感受性は比較的高く、眼の痛みによって食事を食べられなくなることもあります。また、明るい室内ではちゃんと見えていても、暗い時間になると(夕方の散歩)極端に見えにくくなり、歩くことが怖くて散歩を嫌がるケースもあります。
- 緑内障
- 角膜潰瘍
- 進行性網膜変性症
- 脳腫瘍
診断方法
眼圧検査や眼の傷を調べる検査を行います。視覚に関しては、緊張した環境の病院よりもご自宅での評価の方が優れている場合もあります。布などを利用して、片目ずつ隠して、テーブルや椅子などで入り組んだ場所を歩かせてみてください。鼻先が物に当たってから方向転換している場合には、眼が見えていない可能性があります。
脳神経系の病気
脳神経系疾患によって、視覚異常や、ふらつき、めまいなどの歩行に関する不安のため散歩を嫌がる場合があります。
- 脳腫瘍
- 前庭疾患
- 脳炎
診断方法
基本的にはCT/MRI検査も用いた確定診断が必要になります。ただし、比較的高齢になってからの原因が多く、全身麻酔下での検査が難しい場合もあります。そのような場合、仮診断・仮治療に対する反応を見ながら経過を見ることもあります。
心理的な原因
犬は人と変わらないくらいに、いろいろなことを考えています。それを言葉で直接伝えることがなくても、態度や仕草で伝えようとしてくれます。何か散歩に行きたくない理由を探してみてください。私個人の経験として、共に暮らした歴代の子たちで言えば、以下のような場合がありました。
- 自衛隊の演習音を聞いたその日は散歩を嫌がる
- 雷が嫌いで、雷と低気圧を関連付けて気圧が低い日は散歩を嫌がる
- 花火大会の時期は夜の散歩を嫌がる
- 夜ご飯の時間は、散歩よりもご飯を優先して散歩を拒否
診断方法
病気ではないことが前提ですが、何らかの関連を観察によって判断します。
ご自宅で観察していただきたいこと
- いつから散歩を嫌がるようになったか
- 急にか、徐々にか
- どの場面で嫌がるか(歩き始め、途中、帰り道など)
- 明るいとき、暗いときでの差は?
- 元気や食欲はどうか
- 便の状態はどうか
- 音(雷、花火、自衛隊音など)との関連の有無
- どこかの足をかばっているように見えるか
歩いている動画があると診断に役立ちます。
まとめ
愛犬が急に散歩を嫌がるようになった場合、パテラや前十字靭帯の問題など整形外科疾患が原因であることは多いと思います。しかしながら、必ずしもそうではなく、一見、足腰とは無関係の臓器の問題である場合もあり、その原因には重症化してしまうものも含まれます。
散歩の様子から、室内の様子までよくチェックをして、症状が続く場合には早めに動物病院を受診することが大切です。







